アマモ研究 : 熊本県立芦北高等学校との共同研究(2022年4月)

熊本県立芦北高等学校(通称:芦高<あしこう>)とのアマモを対象とした共同研究体制も、41ヶ月目(年度では5年度目突入)となりました。

同校のアマモ場造成活動は、今年度で20年度目!となり、皆さまの応援も頂きながら実施されています。

同高の林業科ブログ

 

今年度(2022年4月~)は、

これまで当社アマモ研究活動の(大きく資金的な面での)礎となっていた、

公益財団法人水俣・芦北地域振興財団(平成30年度~令和3年度 環境技術研究開発)

研究開発題目『定植事業の規模拡大を後押しする 「植物工場技術」を用いた高定着率アマモ苗の効率的大量生産技術の確立』

プロジェクト事業が、2022年3月をもって終了したことから・・・

熊本県立芦北高等学校からの講師役依頼により、林業科 アマモ班と継続的体制で研究を進めて参ります。

(これまでの活動記録は、本ページ最下部のリンク集(計35本)からご覧下さいませ)

 

 

2022年4月は、ラボ活動(水槽構築、植物に対する光の単位を学び測定)・干潟活動(移植したアマモの観察)

そしてドローンによるアマモ場空撮を行いました。

 

 

 

<ラボ活動>

今年度の、ラボ(水槽)アマモ生育比較試験のテーマは「光」・・・としたいリクエストを頂き、

前島先生と研究・比較試験の方法について、打合せを重ねてきました。

そして、3年生が光環境構築を行う日が決まり(4月26日)、前日までに当社馬場研究員と灯具整備、

構築日には、当社北野研究員と講義・測定実習を行いました。

 

 

↑ (画像上側)北野研究員による、植物への光の単位「PPFD(光合成光量子束密度)」についてレクチャー。

アマモにあてる光は、照明する時間・強さ・色・点滅・・・などの設定が可能となりますが、

比較試験第一弾は、光の色(波長)違い(強さ(PPFDが同一)・時間は統一)によるアマモ苗の生育状態の差を見ていきます。

今年11月から(例年)の「アマモ場を増やしたい場所へ植える、水槽環境で種から育てたアマモ苗」へ、

何らかの特徴を持たせられるかチャレンジです。

白色1・白色2・青赤(青多め)・青赤(赤多め)の4種灯具(スペクトル違い)を、4つの水槽それぞれに実装して、試験環境が備わりました。

(画像下側)その後、PPFDを測定する実習です。

バトンタッチし、筆者(園山)が測定機器「光量子計」の使用方法・センサー扱い作法をレクチャーです。

電球にみえる光量子センサーは、1年先輩の代でも利用しましたが、今年度も活用です。

(センサー初登場(2021年2月・ページ展開後下の方<光量子測定>)、PPFDとは・・・の ページ

PPFDは、生徒さんにはなじみのない単位ですが、アマモが生育する水槽の中でセンサーを

・灯具に近づける、遠ざける

・光の見える色によっての違い(PPFDは同じ値でも、明るさの見え方は違う!)

など、実測定を含めて体感。実際測定して、データは数値で表す!に興味をもってくれたようで、良かったです。

ちなみに、青赤照明は2018年の試験で使用していたものが再登場。

商品としての説明ページ:本来は苗用で開発したもの)

海水利用環境にて、灯具は錆がでてきていますが、まだまだ性能維持で活躍します。

 

 

 

↑ ラボ活動終了後、新3年生と初の集合写真です。

 

 

 

<干潟活動>

芦北のアマモ観察は、例年4月から最適期になります。

3月までは、大潮干潮時間が深夜・陽がでる前の早朝にかかりますが、4月からは陽が出ている時間に大潮干潮時間となり、

観察がしやすくなります。

毎年、明るい時間で、潮位が50cmをきる時間がでてくると、今年のアマモはどうかなぁ・・・と、見に行きたくなるものです。

ということで、まずは、芦北高校との活動日前の、アマモ場訪問画像から。

 

 

↑ まず第一声、今年のアマモは綺麗!!でした。

昨年 のアマモは 付着物が多く ついていてくすんで見えていましたが、今年は綺麗な緑色です。

同じポイント・同じような潮位で撮影した昨年と今年の比較画像から、昨年存在していたモアモアした物体(未解明)がないことも、

付着物を呼ばない要因なのでしょうか。

ちなみに、芦北のこのアマモ場は「潮位50cm弱」の時が、アマモ場として綺麗に見えるときと感じています。

堤防から、ウェーダー等の装備なしで観察できるので、紹介しやすい恵まれた場所です。

 

 

 

↑ さらに潮位がさがったころ、干出するアマモも見れます。

ズームで撮影すると「花枝」(アマモの種を蓄えている)も観察できます。

 

 

 

↑ この画像は外海側(通称:堤防から南側)のアマモが自生しにくい場所ですが(2020年の大雨でアマモ場が一掃された機会以前からも)、

アマモが観察できます。3月の活動は大潮干潮時間が深夜帯だったのでわからなかったですが、例年にない動向です。

この場所は、芦北高校が開発したアマモ場造成方法「ロープ式下種更新法」を仕掛けた場所であり、

また、底質が柔らかいことから種子がとどまりやすい環境(2020年の大雨により山から流れてきた栄養分豊富な粒径の細かい砂が30cm程度覆土された)に

変化したことも、関係していそうです。

 

そして別日(4月19日)、干潟活動です。

当社からは、北野研究員と外薗研究作業補佐員が参加(筆者(私)は別件で不在)でした。

 

 

↑ (左上)外海。3年生は、初ウェーダー装着・初干潟。2020年7月の大雨後はあっという間に太ももまで埋まってしまうほどの柔らかさでしたが、

だんだん柔らかい性質の粒径が細かい底質が流出しているのか、時の経過とともに入りやすくなっているそうです(前島先生、北野研究員談)。

(右上)外海。1年先輩が昨年11月から移植したアマモ試験区の、草丈測定・花枝有無調査。

(左下)内海(堤防から北側)の自生アマモの草丈測定。

(右下)最後に、ラボ活動で使用する底質の採取、水槽にセッティングするアマモポット苗の土側となります。

 

 

 

↑ 干潟活動最後に集合写真。初干潟、おつかれさまでした!

ラボで生育させたアマモを移植する初経験は、11月(予定)深夜帯となりますが、

まずは、このように生育していく・子孫を残していく(種がついている花枝も見分ける)を、

実際のアマモ自体をふれて観察できたのは、良かったのではないでしょうか。

 

 

 

<空撮データ取得>

 

↑ 2021年春から続けているアマモ場空撮画像取得も1ヶ月ごと・ある同じ潮位に定期的に継続しています。

地元のドローンオペレーター高峰さんに依頼し、今月もデータ蓄積です(実施目的(ページ展開後下部))です。

 

 

 

最後に、4月のアマモ場観察・活動で撮影できた、干潟にいる鳥さんです。

 

 

≪次回の活動機会記録≫

 

 

 

 

≪ご参考:芦北高校との活動記録リンク集≫

【2018年12月】 : 共同研究体制スタート。アマモ班と初顔合わせ。
【2019年 2 月】 : 芦北高校に当社研究水槽設置。アマモ班との座談会。
【2019年 3 月】 : 深夜の定植活動
【2019年 4 月】 : 明るいときの定植活動(この月より最干潮時間が陽が高い時のため)
【2019年 5 月】 : 花枝採取、マリンチャレンジプログラム授与式
【2019年 6 月】 : ロープ式下種更新法でのアマモ場造成
【2019年 7 月】 : 土壌採取、分析
【2019年 8 月】 : 土壌採取、分析、取材
【2019年 8 月】 : 芦北高校「優秀賞」
【2019年 9 月】 : アマモ観察、採取
【2019年10月】 : アマモサミット・芦北高校もプレゼン
【2019年11月】 : アマモ観察、採取(この月より最干潮時間にあわせて深夜活動)
【2019年12月】 : アマモ移植(試験区設定)、観察、採取、取材
【2020年 1 月】 : アマモ移植(試験区設定)、観察、採取、当社ラボ見学来訪
【2020年 2 月】 : アマモ移植(試験区設定)
【2020年3・4月】 : アマモ移植(試験区設定)、観察
【2020年 5 月】 : アマモ試験区観察、採取
【2020年 6 月】 : ロープ式下種更新法でのアマモ場造成・試験区観察・ドローン飛行による撮影・芦北町環境基本計画掲載
【2020年 9 月】 : 豪雨後の記録1<堤防から見た画像>
【2020年 9 月】 : 豪雨後の記録2<上空・水中から見た画像>
【2020年10月】 : アマモ種子選別
【2020年11月】 : アマモ観察、移植(試験区設定)、種子洗浄、海辺の自然再生・高校生サミット2020
【2020年12月】 : アマモ観察、移植(試験区設定)、「高校生マイプロジェクトAWARD in 熊本・益城」
【2021年 1 月】 : アマモ観察、移植(試験区設定)、空撮画像取得開始
【2021年 2 月】 : アマモ観察、移植(試験区設定)、アマモ種子試験、空撮画像取得、光量子測定
【2021年 3 月】 : アマモ観察、移植(試験区設定)、アマモ種子試験、空撮画像取得、高校生マイプロジェクトAWARD 全国summit
【2021年 4 月】 : アマモ観察、移植(水槽生育分)、アマモ種子試験、空撮画像取得、マリンチャレンジプログラム授与式
【2021年 5 月】 : アマモ観察、移植(水槽生育分)、ロープ式下種更新法、アマモ種子試験、空撮画像取得
【2021年 6 月】 : アマモ観察、移植(水槽生育分)、ロープ式下種更新法、空撮画像取得、日本沿岸域学会参加
【2021年 7 月】 : アマモ観察、空撮画像取得、くまもと環境賞受賞
【2021年 8 月】 : アマモ観察、空撮画像取得、マリンチャレンジプログラム全国大会出場へ
【2021年 9 月】 : アマモ観察、空撮画像取得、アマモ種子選別、アマモポット苗作成
【2021年10・11月】 : アマモ観察、移植(試験区設定、水槽生育分)、空撮画像取得、アマモ種子選別、光量子測定、SPAD値測定
【2021年12月】 : アマモ観察、移植(試験区設定、水槽生育分)、空撮画像取得、SPAD値測定
【2022年 1 月】 : アマモサミット・芦北高校もプレゼン
【2022年1・2・3月】 : アマモ観察、移植(試験区設定、水槽生育分)、空撮画像取得、SPAD値測定、水槽環境構築、マリンチャレンジプログラム全国大会、サイエンスキャッスル九州大会
【2022年 4 月】 : アマモ観察、空撮画像取得、水槽構築、光量子測定
【2022年 5 月】 : アマモ観察、空撮画像取得
【2022年 6 月】 : ロープ式下種更新法、空撮画像取得
【2023年 1 月】 : アマモ観察、移植(試験区設定)+4月追記(アマモ場昨年比較)
【2023年 5 月】 : アマモ観察、ロープ式下種更新法、取材