アマモ研究 : 熊本県立芦北高等学校との共同研究(27ヶ月目)

熊本県立芦北高等学校(通称:芦高<あしこう>)とのアマモを対象とした共同研究体制も27ヶ月目に入りました。

≪スタート時の話題、当社のアマモ研究についての説明・資料は 【コチラ】

≪ご参考(以前の活動記録):2019年 【2月】 【3月】 【4月】 【5月】 【6月】 【7月】 【8月】 【8月(芦北高校「優秀賞」)】・ 【9月】 【10月(アマモサミット・芦北高校もプレゼン)】 【11月】 【12月】・2020年 【1月】 【2月】 【3・4月】 【6月】 【10月】 【11月】 【12月】・2021年 【1月】

 

 

2018年12月より月1度の、同校「林業科 アマモ班」のアマモ場造成への活動にも参加させて頂いておりますが、

2021年2月は、干潟活動①・空撮画像取得・アマモ種子試験・干潟活動②・光量子測定と、共に活動を行いました。

 

 

<干潟活動①>

2月13日(土)、干潟に入りやすいマイナス潮位となる大潮最干潮時間にあわせて、

朝3時前に集合し「アマモ試験区観察・栄養株採取・移植にて試験区設定」を行いました。

当日は、芦北高校から3年生と前島先生、当社からは、私・園山(今回も干潟に入らず記録係と堤防監視役)と北野研究員の参加、

また、芦北高校では約20年前から続くアマモ場再生活動ですが、当時から携わられている森下惟一さんも今シーズン初参加。

当時との活動や環境の違いをお聞きすることができました。

 

 

 

↑ 今シーズンは11月から同じように試験区設定を続けていますが、

11月から設定している試験区(自生アマモを採取し、消失したアマモ場へ移植)の確認、順調な生育です(1枚目右下)

堤防から北側の通称「内海」の多年生アマモを採取し(1枚目左下)、

堤防から南側の通称「外海」の「7月の大雨で流されてしまった元アマモ場」への移植(2枚目上側)を行いました。

移植時には、ある工夫のある方法とない方法とを比較できるように進めています。

また、ラボ試験用に、外海のヘドロ状態の土壌と内海のアマモを採取しました。

 

 

 

↑ 最後は恒例の集合写真。3年生は卒業式を前に、今回が最後の活動。

芦北町役場に就職が決まっている方もおり、いずれは、

アマモ場活動への支援する部署で再会・また共に活動できる場面も期待します。

 

 

 

<空撮画像取得(ドローン飛行)>

2月13日(土)の午後は、今シーズンから開始したアマモ場空撮画像記録(目的(ページ展開後下部))。

前回の取得画像+編集画像より、オンライン会議などで議論し、新たな撮影方法・フライトタイミングでチャレンジ。

フライトは、当日の潮位・天候(風も)によるタイミング次第なので、

芦北地元で依頼できるオペレーター高峰さんの存在に大変助かっております。

(当社取締役もフライトできる資格がありますが、遠方山口から移動するスケジュール調整と当日の天候での実施可否は調整しづらいです)

 

 

 

↑ 今回も無事に撮影完了。

その後、春が近づき、明るい時間でも潮位が50cm近くまで下がりアマモを何とか観察できる時期となってきたので

さらに時間を調整し、夕方に再訪(3月末より観察しやすくなってきます)。

(右下)堤防から北側の内海は、豪雨後から海水も浄化されてアマモも見えるようになりましたが、

(左下)南側の外海は、豪雨でさらに30cm以上ヘドロが堆積しており、潮位の変化時は海水がまだ濁ります。

それでも、移植したアマモは元気に成長しています。

濁りにより光合成に必要な光量が内海より減るはず・・・と疑問がでてきました。

 

 

 

<ラボ活動(アマモ種子試験)>

芦北高校内にあるアマモラボでも活動です。

2月18日(木)、今回は、林業科 アマモ班の2年生と活動。3年生が引退し世代交代です。

 

 

 

↑ アマモ種子を発芽させるための処理(1枚目左上)と、

処理により既に発芽したアマモ種子(2枚目右上)をポットに仕込んで(1枚目左下)発芽試験の準備を行いました。

アマモ種子は当社保管分を提供。比較できるように準備をすすめ、水槽にセッティング(2枚目)して完了です。

今シーズンのラボ試験は、例年よりテーマが増えているので、

この斬新な仕掛けでどうなっていくのか?、生徒さん共々楽しみに進めていきます。

 

 

 

<干潟活動②>

今年は、大潮干潮の潮の引きが当たり年!?

ひと月に2度も、マイナス潮位となるので、2月27日(土)、芦北高校の生徒さんと2月2回目の干潟活動です。

マイナス潮位は、やはり深夜時間なので「2時半」集合でスタートしました。

11月からほぼ同じ内容の活動で「アマモ試験区観察・栄養株採取・移植にて試験区設定」を実施。

当日は、芦北高校からは世代交代した2年生(12月の初めての活動以来で、うずうずしたようです)と前島先生、

当社からは、私・園山(今回も干潟に入らず記録係と堤防監視役)、そして、前回同様、森下惟一さんも参加いただきました。

 

 

 

↑ 今シーズンは11月から同じように試験区設定を続けていますが、今回で5つの試験区が出来ました。

設定している試験区の確認(1枚目左下)

堤防から北側の通称「内海」の多年生アマモを採取し(1枚目上側)、

堤防から南側の通称「外海」の「7月の大雨で流されてしまった元アマモ場」への移植(2枚目左上)を行いました。

森下さんにより内海で「サワガニ」「ヒラメ」がいたとのことで、皆で観察(その後放流)、

大雨により内海もヘドロが堆積しましたが、自然状態は戻ってきていると実感。

 

 

 

↑ 恒例の集合写真。2年生のみの新たな体制(この時、活動できずの方もおります)。

 

 

 

<光量子測定>

2020年7月の大雨後、見慣れた海がひどく濁っていました(7月下旬の様子)。

その後も、下記画像のように(8月と11月)日は経てども、漁港と堤防に囲まれた内海と、佐敷川河口の外海では、

見た目で濁り具合が判別できる差があります(最干潮から潮が上がるタイミングが堆積したヘドロを巻き上げること最も濁ります<上部ドローン項目での画像・左下>)。

 

 

そこで、今年度導入した「光量子計」を用いて、

「海の中に到達する光って、深さごとにどのくらいの数値・堤防から北(内海)と南(外海)で差があるの?」の測定を行いました。

同じ日、干潟活動後は早朝4時半に終了、その後仮眠をして、朝9時集合でスタート。

 

朝9時を選んだのは、大潮満潮であることからで、この日は4m弱の潮位。

その4m弱の潮位の海水中は、海面から深くなるごとに暗くなるイメージですが、

光の粒の量を測定する「光量子計」を用いて数値化(PPFD値を測定)します。

(概念としては「光合成で利用できる光の粒の量」)

 

 

 

↑ まずは、今回、測定手法設計や測器の扱いに慣れた「当社・山口から取締役の岩谷」も来訪にて、

生徒さんと一緒に今回の潮位(測りたい深度)にあわせてセッティングです。

堤防上での準備は、風などで部品の紛失する可能性大なので、堤防付け根のスペースで実施。

さすが海に近いところで育った生徒さん&林業科、紐の結び方(漁師結び・ロープワーク)はお手の物です。

 

船を出してもらって測定したい海上で、センサーを垂らす方法もありますが、

今回はまずは思ったように測定できるかの機材1回目使用でもあるので、

船をださず、堤防から10m超のタモを利用して、アマモ場の上を測定することにしました。

 

 

 

↑ 測定ポイント(いつもの活動場所)まで堤防上を10分間、

センサー類をセッティングした長いタモをみんなで持って移動。

深夜2時の活動ではマイナス潮位だったので、同じ現場の海水量の変化に驚かされます。

 

 

 

↑ アマモ場造成活動を行っているポイントで測定開始。

今後は、アマモ班生徒さんが主体で測定できるように、注意点をお伝えしながら実施。

今回の機会は、ドローンオペレーターをお願いしている高峰さんにもお声がけさせていただき、

測定の様子をドローンを用いて撮影していただきました。

 

 

 

↑ センサーの深度に到達ごとに、PPFD値を読み取ります。

(測定値は、今後の芦北高校さんによる研究発表機会でお伝えしていただきます)

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PPFD値とは(補足)

照度はヒトが感じる明るさの単位(緑色が多いと明るく感じる)ですが、

植物(ここではアマモ)の光の感じ方は、照度ではなく光の粒の量で示すもので、

PPFD値(光合成光量子束密度:光合成に有効な波長400nm~700nmの範囲で、

1秒あたり・1㎡あたりの光量子の数)を用います。

例えば、青い光と白い光のPPFDが同じ量の光が当たっていても、

ヒトには白の方が明るく感じますが(緑色成分が多くあるので)、青い光の方が暗く感じます。

植物の光合成に必要な光は同じですが、照度とPPFDは違いがでます。

今回は、アマモ場へ到達する光の量を見たかったので

(ヘドロ堆積により海水の濁りで差がありそうという疑問から)、PPFDを測定しました。

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↑ 各地点3回ずつ測定。測定回数の意味も伝えながら、測定完了です。

 

 

 

↑ 測定後、生徒さんにドローン実機を見ていただきながら、

高峰さんによるフライト作法や何が捉えられるのかを解説、

また、岩谷からは、加工した画像からこのようなデータが見れますを解説(右下)。

2月中旬に飛ばしたドローンによる加工空撮画像から、

11月から設定している移植アマモも確認できて、生徒さんたちも興奮です。

今年度、当社では植物を6っのカメラでとらえるドローン機材を導入しましたので、

上空からアマモ(藻場面積やアマモの元気度)を捉える作法づくりを目指しながら、

生徒さんにも思う存分利用できる環境を整えていきます。

 

 

 

↑ 最後に明るい時での初の集合写真。深夜と朝方2回の活動、おつかれさまでした!

 

 

 

<祝・全国大会出場! 『全国高校生MY PROJECT AWARD2020』>

12月に、九州地方Summitへ進むための「in 熊本・益城」地方大会にて、

各班代表に選ばれ、さらに全体発表(上記画像)でも1位の評価となり、

九州Summit(2月21日)に進むことになりました!とお伝えしました。

その後ですが、全国summitへ(文部科学大臣賞などが授与)に進むことになりました。おめでとうございます!

 

 

 

全国大会では各地から48プロジェクトが集い、3月21日(日)には、その中から選ばれた6つのプロジェクトが、

オンライン聴講も可能な場で、プレゼンされます。

熊本県芦北町での、芦北高校の取り組み・アマモの重要性が、全国の機会で伝わる機会に、嬉しく思います。

 

≪次回の活動機会記録≫

 

 

 

 

≪ご参考:芦北高校との活動記録リンク集≫

【2018年12月】 : 共同研究体制スタート。アマモ班と初顔合わせ。
【2019年 2 月】 : 芦北高校に当社研究水槽設置。アマモ班との座談会。
【2019年 3 月】 : 深夜の定植活動
【2019年 4 月】 : 明るいときの定植活動(この月より最干潮時間が陽が高い時のため)
【2019年 5 月】 : 花枝採取、マリンチャレンジプログラム授与式
【2019年 6 月】 : ロープ式下種更新法でのアマモ場造成
【2019年 7 月】 : 土壌採取、分析
【2019年 8 月】 : 土壌採取、分析、取材
【2019年 8 月】 : 芦北高校「優秀賞」
【2019年 9 月】 : アマモ観察、採取
【2019年10月】 : アマモサミット・芦北高校もプレゼン
【2019年11月】 : アマモ観察、採取(この月より最干潮時間にあわせて深夜活動)
【2019年12月】 : アマモ移植(試験区設定)、観察、採取、取材
【2020年 1 月】 : アマモ移植(試験区設定)、観察、採取、当社ラボ見学来訪
【2020年 2 月】 : アマモ移植(試験区設定)
【2020年3・4月】 : アマモ移植(試験区設定)、観察
【2020年 5 月】 : アマモ試験区観察、採取
【2020年 6 月】 : ロープ式下種更新法でのアマモ場造成・試験区観察・ドローン飛行による撮影・芦北町環境基本計画掲載
【2020年 9 月】 : 豪雨後の記録1<堤防から見た画像>
【2020年 9 月】 : 豪雨後の記録2<上空・水中から見た画像>
【2020年10月】 : アマモ種子選別
【2020年11月】 : アマモ観察、移植(試験区設定)、種子洗浄、海辺の自然再生・高校生サミット2020
【2020年12月】 : アマモ観察、移植(試験区設定)、「高校生マイプロジェクトAWARD in 熊本・益城」
【2021年 1 月】 : アマモ観察、移植(試験区設定)、空撮画像取得開始
【2021年 2 月】 : アマモ観察、移植(試験区設定)、アマモ種子試験、空撮画像取得、光量子測定
【2021年 3 月】 : アマモ観察、移植(試験区設定)、アマモ種子試験、空撮画像取得、高校生マイプロジェクトAWARD 全国summit
【2021年 4 月】 : アマモ観察、移植(水槽生育分)、アマモ種子試験、空撮画像取得、マリンチャレンジプログラム授与式
【2021年 5 月】 : アマモ観察、移植(水槽生育分)、ロープ式下種更新法、アマモ種子試験、空撮画像取得
【2021年 6 月】 : アマモ観察、移植(水槽生育分)、ロープ式下種更新法、空撮画像取得、日本沿岸域学会参加
【2021年 7 月】 : アマモ観察、空撮画像取得、くまもと環境賞受賞
【2021年 8 月】 : アマモ観察、空撮画像取得、マリンチャレンジプログラム全国大会出場へ
【2021年 9 月】 : アマモ観察、空撮画像取得、アマモ種子選別、アマモポット苗作成
【2021年10・11月】 : アマモ観察、空撮(試験区設定、水槽生育分)、画像取得、アマモ種子選別、光量子測定、SPAD値測定
【2021年12月】 : アマモ観察、移植(試験区設定、水槽生育分)、空撮画像取得、SPAD値測定
【2022年 1 月】 : アマモサミット・芦北高校もプレゼン