アマモ研究 : 熊本県立芦北高等学校との共同研究(30ヶ月目)

熊本県立芦北高等学校(通称:芦高<あしこう>)とのアマモを対象とした共同研究体制も30ヶ月目に入りました。

≪スタート時の話題、当社のアマモ研究についての説明・資料は 【コチラ】

≪ご参考(以前の活動記録):2019年 【2月】 【3月】 【4月】 【5月】 【6月】 【7月】 【8月】 【8月(芦北高校「優秀賞」)】・ 【9月】 【10月(アマモサミット・芦北高校もプレゼン)】 【11月】 【12月】・2020年 【1月】 【2月】 【3・4月】 【6月】 【10月】 【11月】 【12月】・2021年 【1月】 【2月】 【3月】 【4月】

 

 

2018年12月より月1度の、同校「林業科 アマモ班」のアマモ場造成への活動にも参加させて頂いておりますが、

2021年5月は、干潟活動(移植<ロープ式下種更新法>・観察)・アマモ種子試験・空撮画像撮影と、活動を行いました。

 

 

<干潟活動>

5月28日(金)、大潮干潮時間(16時すぎ)でマイナス干潮となることから、14時半に集合して活動開始です。

芦北高校から3年生(学校イベントもあり今回は3名のみ)と前島先生、

ドローンオペレーター高峰さん、正角さん(天草海部・後述)、

当社からは、私・園山と北野研究員・外薗研究作業補佐員が参加しました。

 

 

 

↑ 今回の干潟活動は、アマモ場造成のために、芦北高校が開発した造成手法「ロープ式下種更新法(後述)」と、

アマモラボにおいて使用するアマモ種子を採取するために「追熟装置」に仕掛けるため、

まずは、内海側(堤防から北側)の自生アマモの「花枝」を採取していきます。

 

 

 

↑ 今回も、芦北地元のドローンオペレーター高峰さんに依頼し、空からも観察(目的(ページ展開後下部))です。

今回は3台体制!。「昨年度導入した自社機材」と「高峰さん所有の2機材」により、

1月からアマモ場推移を追いかけているエリアの撮影や植生データ取得、作業の様子を撮影していきます。

毎月撮影後は、データを確認しながらオンライン打合せを重ねており、毎回新たな撮影作法のチャレンジも進行です。

 

 

 

↑ 今回は、天草より「天草海部の正角部長」も来訪。

天草海部さんは、

天草エリアで「STEM教育に取り組む」「SDGsに取り組む」「海の教科書作り」を柱に、

海や地域からの学び・人の育成と交流・先端技術活用を行い、天草の魅力を再発見し、発信しています。

アマモラボが立ち上がって5か月後の2019年の4月に初めて出会い、

天草エリアの御所浦島でのアマモ場造成現場へのお誘いなどから、相互の交流・活動頻度が増してきており、

この度、芦北高校が開発したアマモ場造成手法「ロープ式下種更新法」を実施することから、

本場での様子を見たい!というリクエストより来訪頂きました。

 

 

 

↑ さて、干潟(堤防から南側の外海)。今回の干潟活動日の1週間ほど前に、まとまった降雨があり、

干潟の風景に違和感(この干潟を観察し始めて4年目ですが)がでてきましたので、まずは、その様子を記録します。

(左上)堤防から南側をみると、茶色の何かが広がって見えます。

(左下・右下)拡大すると細かい木々や葉のようです。

(右上)干潟活動翌日の堤防の様子ですが、堤防上に木々が乗っています。大潮満潮時に上がってきたものと思われます。

 

 

 

↑ 干潟活動日のドローンによる空撮画像です。

昨年7月の大雨により川から流れついた泥が30cm堆積していますが(昨年秋に調査)、

堆積前は沖合に流れていくものが、引っかかって残存しているように感じます。

約1年経過した今も(干満によって)堆積した泥は流出していない状況です。

 

 

↑ 参考までに、昨年の大雨後と2年前撮影の空撮画像( 再掲 )です。

干潟活動当日撮影の空撮画像と比較すると、堤防から画面上右側(方位では南側)に広がっていたアマモは、

まだ見られない状態です。

 

 

 

↑ 空撮画像は、アマモ場解析方法の新たなチャレンジにも利用。

先月 に引き続き、アマモ場特定の場所に目印をつけて撮影&計測しました。

6月の干潟活動日が、今シーズンの計測本番となりそうです(アマモがシーズン中、旺盛)。

 

 

 

↑ 採取したアマモ花枝は「ロープ式下種更新法」によるアマモ場造成手法で利用。

干潟にロープを張り、そのロープに一定間隔で花枝の束をくくりつける手法で、熊本県立芦北高等学校(林業科 アマモ班)が

開発した「森林の再生手法である『天然下種更新法』を参考とした自然に近い条件下による手法」(2009年より実践)です。

その効果として、同校がアマモ場造成に向けて活動しはじめた2003年には、2500㎡だったアマモ場が、

2008年まででは1.5倍ほどの拡大をしていましたが、

この手法を2009年から取り入れてからは、2018年には20倍の5万㎡と、20倍もの面積のアマモ場を再生しました。

(その後、昨年2020年の大雨で残念ながら大部分は 消失 してしまいました)

なお、ロープ式下種更新法については、2014年熊本県が発行の「漁業者のためのアマモ場造成マニュアル」

https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/life/80846_99157_misc.pdf   約14Mのpdfファイルです)にも掲載されております。

上記ファイル展開後23ページ。補足として、アマモ花枝をロープに括り付ける方法として、現在は環境配慮もあり分解しやすい紐を用いております。

 

 

 

↑ その後は、11月から設定している移植試験区(堤防から北側の多年生自生アマモを、

堤防から南側のアマモ場が消失したエリアに毎月移植)アマモの身体測定です。

花枝をつけた背丈以上2メートル超へも生長したものもありました。

 

 

 

↑ そして、今月も先月に引き続き、アマモラボ水槽で生育させたアマモ苗も移植です。

 

 

 

↑ 試験区には潮が引いてから、アマモ場に集う食べ物を狙ってか、鳥さんも来訪。

 

 

 

↑ 例年この時期、アマモ場が緑色に映えますが、今年は様相が異なります( 昨年の5月の様子 )。

画像の上半分2枚は、堤防から北側・内海のアマモですが、付着物が多いです。

また、昨年7月の大雨により泥が堆積したことで、その泥がアマモに付着しがちであり、

光合成が例年より不十分な考え方もあり、葉幅が小さく、また、枯れ始めているものもあります。

一方、堤防から南側・外海の移植したアマモ試験区のアマモは、付着物も少なく、

例年どおりの葉幅で青々としている印象です。

 

 

 

↑ アマモへの付着物について、先月のブログでフジツボと示しましたが、

今回一緒に活動をした天草海部の正角さんによると、ゴカイ類(「ヤッコカンザシ」か「オオヘビガイ」)ではないかという

ことでした(上記画像4枚は、正角さん当日撮影分)。

右下2枚は、産み付けられたたまごでしょうか。

 

 

 

↑ 干潟活動の最後は、高峰さんにより参加生徒さん(アマモ班)へのインタビュー素材撮り。

また素敵な動画を作成いただけることでしょう!

大潮であることから、あっという間に潮位上昇です(1分1cm上昇ペース)。

 

 

<ラボ活動>

 

↑ その後、芦北高校に戻りアマモラボへ。採取したアマモ花枝のもう一つの目的、

水槽試験に利用する種子を得るために、追熟装置へセッティングです。

追熟装置を作成してから4年目になりますが、早期に種子が得られることから、毎年運用しております。

昨年の種子選別の様子

 

 

 

↑ 活動最後に、恒例の集合写真。今回は、アマモラボにて。おつかれさまでした~。

 

 

 

↑ この時期、アマモが緑に映え、多くの鳥も集います(すべて今年5月に撮影のもの)。

芦北風景を楽しみに、是非ご来訪くださいませ。

 

≪次回の活動機会記録≫

 

 

 

 

≪ご参考:芦北高校との活動記録リンク集≫

【2018年12月】 : 共同研究体制スタート。アマモ班と初顔合わせ。
【2019年 2 月】 : 芦北高校に当社研究水槽設置。アマモ班との座談会。
【2019年 3 月】 : 深夜の定植活動
【2019年 4 月】 : 明るいときの定植活動(この月より最干潮時間が陽が高い時のため)
【2019年 5 月】 : 花枝採取、マリンチャレンジプログラム授与式
【2019年 6 月】 : ロープ式下種更新法でのアマモ場造成
【2019年 7 月】 : 土壌採取、分析
【2019年 8 月】 : 土壌採取、分析、取材
【2019年 8 月】 : 芦北高校「優秀賞」
【2019年 9 月】 : アマモ観察、採取
【2019年10月】 : アマモサミット・芦北高校もプレゼン
【2019年11月】 : アマモ観察、採取(この月より最干潮時間にあわせて深夜活動)
【2019年12月】 : アマモ移植(試験区設定)、観察、採取、取材
【2020年 1 月】 : アマモ移植(試験区設定)、観察、採取、当社ラボ見学来訪
【2020年 2 月】 : アマモ移植(試験区設定)
【2020年3・4月】 : アマモ移植(試験区設定)、観察
【2020年 5 月】 : アマモ試験区観察、採取
【2020年 6 月】 : ロープ式下種更新法でのアマモ場造成・試験区観察・ドローン飛行による撮影・芦北町環境基本計画掲載
【2020年 9 月】 : 豪雨後の記録1<堤防から見た画像>
【2020年 9 月】 : 豪雨後の記録2<上空・水中から見た画像>
【2020年10月】 : アマモ種子選別
【2020年11月】 : アマモ観察、移植(試験区設定)、種子洗浄、海辺の自然再生・高校生サミット2020
【2020年12月】 : アマモ観察、移植(試験区設定)、「高校生マイプロジェクトAWARD in 熊本・益城」
【2021年 1 月】 : アマモ観察、移植(試験区設定)、空撮画像取得開始
【2021年 2 月】 : アマモ観察、移植(試験区設定)、アマモ種子試験、空撮画像取得、光量子測定
【2021年 3 月】 : アマモ観察、移植(試験区設定)、アマモ種子試験、空撮画像取得、高校生マイプロジェクトAWARD 全国summit
【2021年 4 月】 : アマモ観察、移植(水槽生育分)、アマモ種子試験、空撮画像取得、マリンチャレンジプログラム授与式
【2021年 5 月】 : アマモ観察、移植(水槽生育分)、ロープ式下種更新法、アマモ種子試験、空撮画像取得
【2021年 6 月】 : アマモ観察、移植(水槽生育分)、ロープ式下種更新法、空撮画像取得、日本沿岸域学会参加
【2021年 7 月】 : アマモ観察、空撮画像取得、くまもと環境賞受賞
【2021年 8 月】 : アマモ観察、空撮画像取得、マリンチャレンジプログラム全国大会出場へ
【2021年 9 月】 : アマモ観察、空撮画像取得、アマモ種子選別、アマモポット苗作成
【2021年10・11月】 : アマモ観察、移植(試験区設定、水槽生育分)、空撮画像取得、アマモ種子選別、光量子測定、SPAD値測定
【2021年12月】 : アマモ観察、移植(試験区設定、水槽生育分)、空撮画像取得、SPAD値測定
【2021年 1 月】 : アマモサミット・芦北高校もプレゼン
【2021年1・2・3月】 : アマモ観察、移植(試験区設定、水槽生育分)、空撮画像取得、SPAD値測定、水槽環境構築、マリンチャレンジプログラム全国大会、サイエンスキャッスル九州大会